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ラテンアメリカ準備基金のベネズエラ向け融資について
2017/07/13
(2016年7月執筆)
2016年7 月 22 日にラテンアメリカ準備基金(以下、FLAR)がベネズエラ中央銀行に返済期限 3 年で 4 億 8,250 万ドルの融資を承認しました。
この融資に対する見解を紹介します。
FLAR はアンデス共同体(CAN)の一組織として 1978 年 6 月にアンデス準備基金(FAR)の名前で創設されました。
その後、アンデス地域以外の国が加盟を可能できるよう設立協定を改変(新協定は 1991 年 3 月発効)しラテンアメリカ準備基金(FLAR)に名を変えて現在に至っています。
加盟国はコロンビア、エクアドル、ボリビア、ペルー、パラグアイ、ウルグアイ、 コスタリカ、ベネズエラの 8 カ国。FLARの本部はコロンビアのボゴタにあります
FLAR の役割は
① 加盟国の国際収支赤字補填のための融資や保証を供与すること、
② 加盟国の外国為替政策、金融政策の調和を図ること、
③ 加盟国の外準運用の条件を改善すること、です。
下表は 2016 年 6 月時点で各加盟国が FLAR へ拠出した金額を示した表です。
ベネズエラからの拠出額は 4 億 8,250 万ドルでFLARからの融資額と完全に一致しています。
FLAR からの融資は見方を変えると、ベネズエラ自身が拠出した資金を戻しただけとも言えます。
なお、中央銀行の公表値によるとFLAR への拠出金 4.8 億ドルは中銀の外貨準備の一部として計上されています。
野党が多数派を占める国会は、今回の融資について「国会の承認なしで実行することは違憲」と認識しています。
ルイス・シルバ野党議員は融資プロセスがベネズエラ憲法に準じていないので、この融資は政権が変わった際に無効になる可能性があるとコメントしています。
一方で最高裁判所は『FLARからの融資受け入れは中央銀行の独立裁量の範囲で決められるもので、政府債務ではないので国会の承認は不要』との裁定を示しています。
また、現地紙『エル・ムンド』が中央銀行の専門家へのインタビューした内容では、チャベス政権以前にも FLAR や IMF からの融資を受け入れたことがあったが当時も国会の承認はもらわなかったと答えている。
どちらの主張が正しいかを自分なりに整理するために最高裁の裁定、憲法、中央銀行法を確認しました。
詳細は割愛しますが、結局のところ解釈の問題で国会、最高裁どちらかが完全に間違っていると断定できません。
4.8 億ドルはベネズエラの経済規模からすれば決して大きな金額ではありませんが、資金繰りが厳しい現政権にとっては貴重な資金です。
ベネズエラの 2015 年の食料品輸入額は約38億ドルでした。
4.8億ドルあれば12.7%の食料品の輸入用外貨が確保できることになります。
なお、返済期限 3 年というのもベネズエラ政府の戦略が垣間見えます。
2018 年は大統領選挙が行われる予定なので、選挙対策費として政府は十分な資金を確保する必要があります。
なので、中央政府とPDVSA はできるだけ2018年の返済が少なくなるよう設定されています。
返済期限を迎える2019 年は大統領選挙を終えた後です。
更に対外債務の返済が比較的少ない年になるため 2019 年を支払い期限に設定したものと想像できます。