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転売者(バチャケロ)が増えるわけ
2017/06/28(2016年6月執筆)
ベネズエラに関わっている方であれば、食料品を買うためにスーパーマーケットに並ぶ長蛇の列を写真かなにかで見たことがあると思います。食糧品に限らず石鹸やトイレットペーパーを買うにも3時間待ち。さらに1回の購入数に制限があるので2個、3個しか買えない状況です。
ただ、行列に並んでいる全員が自分の家庭のために商品を買っているわけではありません。行列の中には買った商品を転売する人が大勢います。この転売者(あるいは転売行為)をベネズエラでは「バチャケロ」と呼んでいます。個人的には大げさだと思いますが、行列に並んでいる 7 割はバチャケロという調査会社まであります。
ちなみに、バチャケロとはベネズエラに生息するアリ「バチャコ」に由来しています。バチャコは行列をつくり、時には自分以上の物を運びます。スーパーマーケットで行列をつくり、大荷物を抱える様を揶揄して転売業者をバチャケロと呼ぶようになりました。
2012、2013 年頃もバチャケロは存在したが、今ほど一般的ではありませんでした。どうして、ここまでバチャケロが増えたのでしょうか。
答えはバチャケロが当時よりも儲かる商売になったから。では、どうしてバチャケロが儲かるようになったのか。
理由は①為替レートのゆがみと②価格統制にあります。
2012 年当時の公式な為替レートは 1 ドル 4.3 ボリバルでした(SITME は 1 ドル 5.3 ボリバル)。政府が割り当てる外貨で満たされない民間の外貨需要は平行レートに流れますが、それでも当時の並行レートは1ドル8.0~20ボリバル程度だった。当時は今と比べて政府が外貨を国内へ流していたと言えます。
どうして、2012 年にはバチャケロが今ほど多くなかったのか事例をもとに説明します。
2012 年 3 月の赤ちゃん用おむつ(Mサイズ)68 個入りの値段(統制価格)は 166.07 ボリバルでした。これと同じものが 2016 年 6 月に 815.32 ボリバル(同じく統制価格)に変更されています。約 4 年で値段は 5倍に上がっています。
一方で、並行レートはどうでしょうか。平行レートに決まった数字は存在しませんが 2012 年 3 月であれば 1 ドル 8.0 ボリバル程度だったでしょう。それが 2016 年 6 月には 1 ドル約 1,000 ボリバル程度と言われています。平行レートについて言えば、約 4 年間でボリバルの価値がドルに対して 125 分の1になったことを意味します。
2012 年 3 月であれば平行レートで生活する人は統制品の赤ちゃん用おむつ(Mサイズ)を 20.76 ドル(166.07 ボリバル/8.0 ボリバル)で買っていたことになります。
では、2016 年 6 月の時点で平行レートを用いて生活する人は同じ商品をいくらで買うことになるだろう。答えは約 82 セント(815.32 ボリバル/1,000 ボリバル)。
現在は 1 ドル 600 ボリバルの SIMADI という公式な為替レートが存在します。平行レートではなくともSIMADIで両替すれば1ドル36セント。ちなみに、日本での小売価格を調べてみると、ネット通販で同じような商品が 1,500 円から 1,800 円程度で買えそうです。
つまり、2012 年当時の統制価格は少し高いくらいの値段設定だったが、現在の統制価格は安すぎるということになります。統制価格がそれなりの値段付けであれば、転売者が得る利ざやは小さい。ゆえに当時、バチャケロは商売として成り立たなかった。
しかし、為替レートにゆがみが出ている場合、バチャケロが相当に利ざやを上乗せしても SIMADI あるいは平行レート生活者にとっては購入に値する価格になります。治安の良くない当地で何時間も行列に並ばないといけないのであれば、多少価格を上乗せしてもバチャケロから商品を買う価値は十分あると思うのは不思議なことではありません。
つまり、①為替レートのゆがみ、②価格統制を正せばバチャケロはなくなるとも言えます。
しかし、この2つを正常化させるのが容易ではないのは間違いないでしょう。。