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ベネズエラ 17年の10大ニュース(7位~10位)

2017/12/30

第7位 「3月 オルテガ元検事総長の与党離反」

反政府デモが拡大した引き金はオルテガ元検事総長の与党離反だろう。

最高裁判所は3月末に国会の機能を最高裁判所が指定する組織に引き継がせるという決定を下した(後にこの決定は取り下げられた)。

この決定に対して野党、国際社会が憲法を逸脱する行為だと非難した。

ただ、国民が驚いたのは政府の決定や外国の反応ではなく、与党の重鎮の一人だったルイサ・オルテガ検事総長(当時)が、この決定を「憲法の亀裂」と非難したことだった。

ベネズエラの公権力の中でも最高クラスの地位である検事総長が政権に反旗を翻したことで野党政治家および支持者の政権交代への機運は一気に拡大した。

制憲議会の発足と同時にオルテガ検事総長(当時)は解任され、オルテガ元検事総長は国外でマドゥロ政権の非難を続けている。

 

第8位 「8月~12月 汚職撲滅と反政府分子浄化」 

ルイサ・オルテガ検事総長が8月に解任された。

制憲議会は護民官を務めていたタレク・ウィリアム・サアブ氏を後任に添えた。

サアブ検事総長は、オルテガ元検事総長の在任中に検察庁内には汚職を見逃すための仕組みが存在していたとして判事らを大量に解雇した。

 

実際にサアブ検事総長は外貨管理制度を悪用した民間企業の汚職を相次いで摘発している。

サアブ検事総長は汚職で不正に取得した外貨は国庫に返納させるべきだと宣言しており、外貨不足が深刻なベネズエラの資金源になる可能性を秘めている。

サアブ検事総長の汚職摘発は民間企業にとどまらない。

政府組織、とりわけPDVSA本社・子会社役員らの汚職を積極的に摘発している。

PDVSAの汚職摘発はマドゥロ大統領、アイサミ副大統領、制憲議会を中心とする政府中枢からのサポートを受けている。

表向きはPDVSAの汚職体質を浄化し、オペレーションを回復させることだと説明しているが、真の狙いはラミレス元国連大使を政界から失脚させることだとの意見もある。

ラミレス氏は2004年~2014年までPDVSA総裁、石油相を務めたベネズエラ経済界の大物だ。

14年12月末に国連大使に就任したが、17年の12月に辞任した。

 

どうやらラミレス氏は18年の大統領選に出馬する意思があったようだ。

しかし、ラミレス元国連大使は汚職の捜査が進められており、彼の出馬はかなり難しい。

とは言え、ラミレス氏の資金力は健在で、政界にも未だに一定の影響力がある。

ラミレス氏の推薦で故チャベス元大統領の娘が出馬するとの噂が流れている。

 

第9位 「12月 与野党交渉の再開」  

8月に反政府デモが収束し、10月の州知事選で与党が圧勝した。

野党は

①与党に有利な選挙システムの透明化

②政治犯の解放

③外国からの人道支援受け入れ

④国会の機能回復

などを求め、11月に政府との交渉を開始すると発表した。

すでに12月2~3日、14~15日に交渉が行われ、1月11・12日で3回目の交渉を予定している。

 

主な成果は反政府デモの際に拘束された政治家らの解放だろう。

制憲議会はクリスマスを前に、反政府デモに関連して逮捕された80名超の解放を進言。

12月末で44名の解放が確認されている。

 

与党側の求めは

①米国による金融制裁の解除

②政府へのメディアを通じた攻撃の停止

特に①が議論の中心だ。

 

ベネズエラ 17年の10大ニュース(1位~3位)」で紹介した通り、米国による金融制裁はベネズエラ政府はもちろん国内経済全体に悪影響を及ぼしている。

「米国の制裁は野党を支援することが目的」というのが政府の主張で、野党が米国に対して制裁の停止を求めれば制裁は解除されると考えている。

野党側は制裁は米国政府が決めたもので、我々が直接関与するものではないとのスタンスを示しているが、仮に野党が制裁を止めるよう米国に訴え、それでも米国が制裁を解除しない場合、与党も野党も望まない制裁を科していることになる。

誰のために制裁を科しているのかが分からなくなり米国の立場が危うくなる。

野党が働きかければ、米国の制裁が停止されるとの政権側の意見はあながち間違いとは言えないだろう。

 

 

第10位 「5月~8月 DICOMの稼働と停止」 

2017年5月に為替協定38号、通称DICOMが始まった。

それまでは2015年2月に始まった為替協定33号、通称SIMADIが継続していた。

DICOMは毎週1回、民間の法人・個人に対して外貨を供給するシステムで1ドル2,010ボリバルから3,345ボリバルで推移していた。

外貨の供給量が少ないという問題をはらみながらも透明性と手続きの簡易性でDICOMはある程度機能していた。

しかし、米国からの制裁を受けて政府からの外貨送金に障害が出たため、8月からDICOMは停止を余儀なくされた。

現在、民間企業が公式な手段でボリバル通貨を外貨に両替するのはほぼ不可能に近い。

同様に公式な手段で外貨をボリバルに両替することも不可能だ。

政府は制裁の回避策としてデジタル通貨ペトロの導入の検討を進めており、早ければ18年1月に運用を開始する可能性がある。

もしペトロの運用が始まれば、中央銀行が発効するデジタル通貨として先進的な取り組み事例になるだろう。

 

 

番外編 「通年 PDVSAの産油量減少」  

2017年にPDVSA産油量が減少するであろうことは16年の頃から予期されていたものであり、サプライズというわけではないが、経済に与える影響が大きいという意味で重大ニュースだろう。

OPECの「Monthly Oil Market Report」によると、ベネズエラの産油量(第三者の情報)は16年12月時点の日量203.4万バレルから17年11月時点で日量183.7万バレルまで減少している。

2017年は産油量が減少した一方で、原油価格が上昇した(16年の1バレル35.2ドルから17年は46.7ドルに上昇)ため外貨収入は16年より増えたとみられるが、18年は外貨収入が減る可能性が高そうだ。

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